【読書感想】ラッシュライフ:伊坂幸太郎/新潮文庫

読書

今回は伊坂幸太郎さんの『ラッシュライフ』の感想です。

泥棒を生業とする男は新たなカモを物色する。父に自殺された青年は神に憧れる。女性カウンセラーは不倫相手との再婚を企む。職を失い家族に見捨てられた男は野良犬を拾う。幕間には歩くバラバラ死体登場ーーー。並走する四つの物語、交錯する十以上の人生、その果てに待つ意外な未来。不思議な人物、機知に富む会話、先の読めない展開。巧緻な騙し絵のごとき現代の寓話の幕が、今あがる。

引用元:bookデータベース

騙し絵のごとく進む物語

巧緻な騙し絵のごとき、私も最後までまんまと騙された一人でした。

バラバラ死体と四つの物語がすごく巧妙に絡まっていて、アハ体験のような感覚になりました。

見えているのに中々そこに”気付かない”というか、”気付けない” (笑)

四つの物語というのが、

①志奈子:画家
戸田:肥えた画商

②河原崎:神に憧れる主人公の学生
塚本:宗教団体幹部
高橋:宗教団体で神のような存在

③京子:主婦でカウンセラー
青山:プロサッカー選手

④豊田:無職となり、離婚野良犬拾う

この四つの物語と、登場人物の様々な人生がどう絡みあうのか…

伏線は終わりが近づくにつれ、気持ちがいいほどに回収されます。

伊坂ワールドに吸い込まれるように作品を読み終えました。

登場人物が駅で目にしている、「エッシャーのだまし絵」。

自分の知らないところで、

自分の知らない人間と、

知らないうちに人生のリレーが行われている

と言うことがこの物語の中に

たくさん散りばめられています。

点と点だと思っていたそれぞれの人生は、

実は線で繫がっている、

それが薄い線であろうと人生は、

誰かの人生とどこかで繫がっている

ということなのでしょう。

この物語の中だけではなく、

私たちの人生だって、

例え知らない人同士であっても

どこかで繫がっている可能性はあるということ。

それを表わすために、

エッシャーのだまし絵を

この作品に取り入れたのかなと思いました。

もしくは伊坂先生は、

このエッシャーのだまし絵を題材にして、

この『ラッシュライフ』という物語を作ったのではないか?

と想像は膨らむばかり。。。

神様はいるのか?

「神様はいるのか?」

この物語の裏テーマのような気がしました。

神様の存在を信じるのかは人それぞれ。

河原崎や豊田から感じ取れるのは、

何か罪の意識に苛まれたとしても、

信じることで人生が救われる人もいるということ。

ちょっと勧誘っぽくなってきましたが…。(笑)

この作品はもしかしたら神様目線から見た、

人々の人生なのかなぁと思いました。

神様目線から見れば、

「人々の人生なんて全部繫がって見えているんだろうな」

と思わせてくれる作品でした。

本当の神様は、

豊田が拾った野良の柴犬なんじゃないかな…

とか思っちゃたりして。

特別出演の登場人物

伊坂先生の作品には、

他の作品の登場人物がこっそりと出演します(笑)。

ラッシュライフには、

オーデュボンの祈りの伊藤やカカシの話が登場、

重力ピエロの黒澤が泥棒役で登場します。

この楽しみがあるのも

伊坂幸太郎作品の醍醐味でもあります!

ストーリーを分か上で上でもう一度読み返すと、

また違った感想が生まれそうな気がするので、

また読み返したいと思います。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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