伊坂幸太郎、連作短編の傑作

「俺たちは奇跡を起こすんだ」
引用元:bookデータベース
独自の正義感を持ち、
いつも周囲を自分のペースに巻き込むが、
なぜか憎めない男、陣内。
彼を中心にして起こる不思議な事件の数々。
何気ない日常に起こった五つの物語が、
一つになったとき、
予想もしない奇跡が降り注ぐ。
ちょっとファニーで、
心温まる連作短編の傑作。
「チルドレン」は小説現代で連載されていた
短編小説を一つの長編小説としてまとめています。
短編集のふりをした長編小説
①「バンク」は物語の主軸となる、三人が出会う話。
陣内、鴨居、永瀬が大学生の時の話で、
銀行強盗事件の現場にこの三人が、
たまたま居合わせてしまったところから
物語はスタートします。
気になるのが、結局銀行強盗は何人いたのか?
ということ。
目の見えない永瀬が推理していた、
「二人だけのはずの犯人は本当は十人いる?」
は本当だったのかがとても気になるところです。
②「チルドレン」はこの事件から
12年後の話を描いています。
陣内は家裁調査官として働いています。
武藤という陣内より3個下の部下が登場し、
陣内に翻弄される姿が面白いです。
③「レトリーバー」はどちらかというと、
永瀬の彼女・優子がメインの話になっています。
永瀬は目が見えないため、
いつも盲導犬のレトリーバー・ベスと一緒に行動しています。
ベスに嫉妬する優子に注目です。
④「チルドレンⅡ」は②「チルドレン」から1年後の話。
ここでも陣内に翻弄される武藤が描かれています。
口は悪い陣内だが、
どこか憎めない理由がわかる気がしてくるのが、
この「チルドレンⅡ」な気がします。
でたらめな事を言っているようで、
正論を言っているからですね(笑)
⑤「イン」は①「バンク」から1年後の話。
つまり、陣内と永瀬が出会ってから1年経った話。
ぶっきらぼうに見える陣内だが、
永瀬のことを目が見えないからと言って、
特別扱いしていないところが良いなぁと思います。
一見乱暴な扱いに見えますが、
永瀬は自分に対して特別扱いをしない陣内を
どこか心地良い存在と思っている所にホッコリしました。
「俺たちは奇跡を起こすんだ」
実は、思い返すと全ての章の中で、
陣内は奇跡を起こしているのです。
伊坂幸太郎さんが言っていた、
「短編集のふりをした長編小説」
なるほどな。と思いました。
おまけに
バンクの物語の中で、
銀行強盗グループが頬に赤いテープを
「×」に付けているのを見て、
永瀬が言った言葉
「関東で最近起きている四人組の銀行強盗も同じ趣向をしているらしいよ」
この四人組の銀行強盗は
別の作品『陽気なギャングが地球を回す』に出てくる四人を指しています。

最後に
チルドレンは、
2006年5月にドラマ化されているそうです。(知らなかった!!)
そして2006年11月に映画化もされています!

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